Episode ここだけの話など

002.前例のない仕事。指示に従うのではなく知恵を絞る

上司から指示を受けて、それをきちんとこなすだけでも、一定の評価を得られるかも知れません。しかし、より高い評価を受けるには、知恵を絞り、上司の期待を上回る仕事をするのが一番ではないでしょうか。
研修局にいたころ、のちに総理となる麻生太郎の全国遊説に随行したことがあります。当時の麻生の党内での役職は、自民党青年局長でした。

麻生太郎・青年局長(当時)と

あるとき、麻生が私に「『文化活動のすすめ』という冊子を作れないか」と聞いてきました。私がこれまで作ってきた冊子を把握してくれていたのでしょう。そのうえで私に指示を出してきたのです。
私は文化活動をテーマに『文化活動のすすめ』も工夫して作りました。気になったのが、遊説で全国を回ったときに見かけた高齢者たちです。各県で高齢者が公園や広場に集まり、ゲートボールをしている光景をよく目にしたのです。そしてゲートボールで何かできないかと考え、帰京してから麻生にゲートボール大会を開催するのはどうかと提案しました。それは、高齢者のために若者が協力するというゲートボール大会です。高齢者、若者、子供の「三世代交流」ゲートボール大会というアイデアでした。
当然、麻生も興味を持ってくれました。
ただ、麻生は例のダミ声で「自民党青年局の主催ではダメだな」という。それでは盛り上がらないと考えたのでしょう。そこで逆に「JC(日本青年会議所)に主催させよう」と提案してくれたのです。
そうと決まればあとはこの案を具体化させるだけ。ゲートボール大会を盛り上げるのに、高齢者だけを集めても仕方ないでしょう。そこで「三世代交流」と謳い、大人や子供たちにも参加してもらったのです。
 
また、当時の総理・中曽根康弘に優勝カップを出してもらうことにしました。
中曽根弘文・総理秘書官(当時)は、当初、スポーツ大会にトロフィーを出すのはどうなのだろうかと難色を示しました。しかし、中曽根総理の施政方針ににある「たくましい文化と福祉の国づくり」の政策と合致することだと説明し、納得してもらいました。

 
以上のような経緯で開催されたゲートボール大会が、市レベルでは市長杯、県レベルでは県知事杯、そして最後は総理大臣杯となり、大盛況だったことはいうまでもありません。
大事なのは上司からいわれたことに従うだけではなく、より良くするために知恵を絞ること。私にはエリートのような学歴や学力はありません。しかし、企画力や応用力は負けない自信があります。自分の強みを活かしてより良い仕事をする。それを心掛ければ必ず良い仕事ができることでしょう。 
 
『気配りが9割 永田町で45年みてきた「うまくいっている人の習慣」』